第七回 「東への旅 #2」
内陸の町に住む僕にとって海を見にいくのは特別なことである。 北海道の遠軽町からさらに東へ。北海道の端っこである湧別町へと。車を走らせる。 冬のオホーツク海を見にいくのだ。
流氷が見られることで有名な土地ではあるが、平日のド真ん中であったし、さらに言うなれ ばまだそもそも流氷は接岸していなかったので、観光客ともすれ違わない。絵に描いたような一人旅であった。
海は好きで昨年の夏は海岸線を車で走りに行ったりしたものだが、免許を取ってからというもの冬の海を見にいくのは初めてである。 最初に湧別町の海際にある小さなお土産屋さんに入った。カニなどが売っていたが、しかし、まあ。正月は終わったのでホタテの端っこである貝ひもを買った。カニの十分の一の価格であった。
そして、サロマ湖と呼ばれる湖の端っこまで車を走らせて海岸に出てみる。大きな流木が気 になった。板状の凍った砂も海岸線に続く。
いってしまえば何もない風景だが、何もないがたくさんあるということができて、僕はそういう風景が好きだ。そんな風景を見ると日本の端っこにきたな、という気分になる。 何もなくて端っこ。なぜか心が落ち着くのである。根暗かもしれない...。
夜。ホタテの貝ひもとビールで晩酌をする。 ホタテの端っこもこれまた美味であった。北海道の端っこに来る際はぜひご賞味あれ。